配電盤よ、安らかに

85%フィクションと15%の今はもう失われたもの

ただひとつ 今も思い出すよ

僕は君が好き、と言っている間だけ、孤独じゃ無くいられる気がする。僕は君が好き、僕は君が好き、そう口にするのが好き。

みんな、なんか、とっても優しいな。
こんな僕なんかでも、好きって言ったら結構受け入れて貰える。

そんなこというけど君は誰のことでも好きじゃんと笑う君に、誰でもって訳ではないよと答える。もうすっかり夜は折り返し地点だから、誰もいない深夜の新宿西口へ駆けに行こう。未来都市みたいな都庁の広場で、星が落ちてくるんだよ。君は本当に可愛いね、と僕は言える。愛を語るなんて無敵。

女の子は、他の女の子の話をされるのって好きみたいで不思議だ。僕は、僕が昔好きだった人の話をして、如何にその5年前の僕が愚かしく必死に彼女に好きだと伝えたか、そしてその後その恋愛が如何に可哀想な顛末を辿ったのか話してあげる。あのね、そういう類の落ちてくる恋愛というのは、我々が思っているよりも、そんなに多くないんだよ、そんなに好きだったんならば私に愛を語っている場合ではなくて今すぐ走っていって彼女にもう一度好きだと言えばいいじゃない、と僕の目を真っ直ぐ見て君が言う。ああ、本当に君は可愛い良い子だね、とだけ口にして笑う。それはもちろんそう悪い案ではないけれど僕には手遅れな様に思える。

ほらこんな風に、手を握るのは難しいことではないのに、どうしてできなかったんだろうね。これは何だろう、後悔とも違う鈍い痛みがずっと疼いてる。でも、愛を語るだけで少し息が出来るような気分になるんだ。とてもとても不安なので、今夜は夜の終わりまで一緒にいて欲しいんだけどな。